抄録
ノロウイルス,サポウイルスに代表されるカリシウイルスは,ヒト,哺乳類のみならず広く動物に存在する.臨床症状も胃腸炎のみならず多彩である.不顕性感染のこともある.カリシウイルスは環境に強いために,宿主動物間の感染以外に自然界,食品などを介しての感染が見られる.カリシウイルスでは突然変異の他にゲノム内の組換えが頻繁にみられる.現時点では組換えは同じ動物種ウイルス内である.遺伝子診断,遺伝子解析や組換え中空ウイルスを用いた酵素抗体法で,臨床や疫学研究が進んできた.ウイルスと宿主との免疫反応はウイルス遺伝子型特異性が強く交差免疫が出来にくい.従ってノロウイルスやサポウイルスなどのカリシウイルス感染では,世界規模で新しい変異株の流行が短期間に広がる可能性がある.感染にカリシウイルスの細胞側のレセプターである組織血液型抗原が関与する場合があり,感染,発症に個体差がある.ヒトノロウイルス,ヒトサポウイルスは細胞培養が出来ないので研究に制約がある.培養できる動物のノロウイルスを用いて病態や治療薬・消毒薬,ワクチンの開発が進んでいる.