抄録
サル免疫不全ウイルス(SIV)を用いたサルエイズモデルにおいて,弱毒SIV生ワクチンは,他のワクチンよりも強毒SIV攻撃接種に対し高い防御効果を示すが,その防御機序はいまだ解明されていない.筆者らによる最近の弱毒SIV生ワクチン免疫相関研究において,その防御効果は,抹消血,粘膜組織のSIV特異的T細胞免疫反応および血漿中抗体価とは相関しなかったが,リンパ節のSIV特異的CD4+およびCD8+T細胞免疫反応とは相関が認められた.この防御効果を示したサル個体群では,弱毒生ワクチン株がリンパ節濾胞性CD4+T細胞において持続感染することにより,高頻度のエフェクターメモリーT細胞免疫反応が誘導・維持されていた.よって,弱毒SIV生ワクチンによる防御免疫は,2次リンパ組織における持続的な抗原産生により誘導されるエフェクターメモリーT細胞免疫反応によるものと考えられる.本稿では,この最新の知見から弱毒SIV生ワクチンによる防御免疫誘導のメカニズムを解説し,有効なエイズワクチンに重要な免疫反応について言及したい.