抄録
大阪大学微生物病研究所(阪大微研)とタイ保健省医科学局との共同研究拠点として,2005年に日本・タイ感染症共同研究センター(RCC-ERI)が設立された.また,マヒドン大学熱帯医学部との共同研究拠点として,2010年にマヒドン-大阪感染症センター(MOCID)が設立された.RCC-ERIおよびMOCIDにおいて,タイに蔓延する各種ヒト病原性ウイルスについての分子疫学や基礎的研究が実施されている.今回,これらの海外共同研究拠点における研究活動の概要と共に,RCC-ERIにおいて実施したタイ型HIV-1外被蛋白質の性状解析について紹介する.また,JSTとJICAが共同で実施している地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS)として,阪大微研はタイ保健省医科学局及びマヒドン大学熱帯医学部を中心としたグループにより2008年より国際連携型共同研究を行っている.本事業では,感染症に対して有効なヒト単クローン中和抗体産生細胞の作製を目的とし,得られた候補について抗体医薬としての応用を目指している.本稿では,本事業の概要と共に本事業にて得られた知見のうち,抗デングウイルスヒト単クローン抗体を中心に紹介する.