ウイルス
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総説
アデノウイルスベクターの最近の進展:VA欠失ベクターを中心に
近藤 小貴前川 文斎藤 泉鐘ヶ江 裕美
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2013 年 63 巻 2 号 p. 155-164

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抄録

 非増殖型アデノウイルスベクター(FG-AdV)は,各種細胞への高い遺伝子導入効率を示し有用性が高いベクターである.これまで問題であったベクターに対する免疫反応による肝臓の炎症については,原因ウイルスタンパク質の同定に成功し,この問題を解決した「低炎症型ベクター」を報告した.しかし,究極のFG-AdVを考えた時,残存しているアデノウイルスゲノム領域からPol IIIにより発現している2種類のウイルス随伴RNA (VA RNA)の欠失が必要である.VA RNAはウイルス増殖に必須では無いものの,ウイルス増殖に適した環境を整備する役割を担っており,特に感染後期に大量に発現しているため,VA RNAをトランスに供給する293細胞ではVA欠失AdV作製は困難であった.我々は,新規VA欠失AdV作製法を開発し,高力価のVA欠失AdVの回収に成功した.そこで,C型肝炎ウイルス(HCV)に対するshRNAを発現するVA欠失AdVを作製し,従来のFG-AdVとHCV複製抑制効果を比較したところ,VA欠失AdVが高い抑制効果を示したことから,VA RNAがshRNAの成熟過程で競合拮抗していたことを明らかにした.本ベクターは今後FG-AdVのスタンダードになると考えている.

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© 2013 日本ウイルス学会
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