ウイルス
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総説
タバコモザイクウイルスの複製タンパク質による複製鋳型認識機構
石橋 和大石川 雅之
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2014 年 64 巻 1 号 p. 3-10

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抄録

 プラス鎖RNAウイルスの複製タンパク質は,複製の鋳型を特異的に認識して細胞内の特定の膜上にリクルートし,複製複合体を形成する.筆者らは最近,試験管内ウイルスRNA翻訳・複製系を用いて,翻訳中のタバコモザイクウイルス(TMV)複製タンパク質新生ポリペプチドが,ゲノムRNAの5' 非翻訳領域 (UTR) に結合し,TMV RNAを複製に導くことを見いだした.複製タンパク質は,一旦完成すると,ゲノムRNAにトランスに結合することはできなかった.TMVの複製タンパク質は,自身の翻訳鋳型となったRNA分子を優先的に複製鋳型として選択する(シスに働く)ことが以前から知られていたが,この結果は,複製鋳型がどのようにしてシスに選択されるのかを合理的に説明するものである.また,5' UTRに複製タンパク質が結合するとTMV RNAの被翻訳効率が低下した.TMV複製タンパク質は5' UTRに結合することにより複製鋳型を選択すると同時に新たな翻訳を抑制し,TMV RNA上を5' 末端から移動するリボソームと,3' 末端から移動するRNAポリメラーゼの衝突を事前に防止していると考えられる.

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© 2014 日本ウイルス学会
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