ウイルス
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総説
ヒトパレコウイルス
相澤 悠太齋藤 昭彦
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2015 年 65 巻 1 号 p. 17-26

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抄録

 ヒトパレコウイルス(Human parechoviruses: HPeVs)はピコルナウイルス科パレコウイルス属に分類され,1本のプラス鎖RNAをゲノムとして持つウイルスである.1999年にエコーウイルス22, 23がヒトパレコウイルス1型,2型(HPeV1, 2)に再分類され,HPeVsは急性胃腸炎や呼吸器感染症の原因ウイルスと考えられていたが,2004年のヒトパレコウイルス3型(HPeV3)の報告を契機にHPeVsに対する見方が大きく変わった.なぜなら,HPeV3が新生児や生後3か月以下の早期乳児に敗血症,髄膜脳炎などの重症感染症をきたし,神経学的後遺症を残したり死亡することが報告されたからである.現在,小児科領域で注目を集めている新興感染症の1つである.日本では2006年から2, 3年おきに流行を繰り返しており,2014年夏にも流行があった.典型的な臨床所見は,高熱,高度な頻脈,活気低下,食欲低下などを呈し,腹部膨満,臍突出,掌蹠の紅斑,網状チアノーゼなどを伴う.診断には,血清や髄液などの無菌的部位からの検体を用いたPCR法,咽頭,糞便などの検体を用いたウイルス培養などが用いられる.なぜ,新生児,早期乳児に重症感染症をきたすかについてのメカニズムは明確でないが,HPeV3に対する母体からの移行抗体の欠如,もしくは低値が関与していることが示唆されている.現時点では特異的治療はなく対症療法が中心である.今後もHPeV3感染症の流行は繰り返すことが予想され,病態の解明と特異的治療法,そしてその予防法など,多くの課題が残されている.

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© 2015 日本ウイルス学会
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