抄録
エボラ出血熱(EVD)対策において,医療機関は患者を速やかに診断し,治療することで市中における感染伝播を抑制する役割を担っている.今回の西アフリカにおける流行に関連して,日本国内でも疑似症患者が報告されたが,いずれも実験室診断でEVDは否定された.患者との接触歴を認めない場合は,EVDの蓋然性は一般に低い.発症してから消化器症状を呈する時期になると感染性が高くなり,極期は第7-10病日である.欧米では25名を超えるEVDの患者に治療が行われた.西アフリカより致死率は低いことから,輸液,人工呼吸,血液浄化療法などの支持療法の重要性が明らかとなってきた.実験的治療薬の有効性は現時点ではっきりしない.医療従事者の感染防止は重要であり,個人防護具や曝露後処置などにおいて,指針が整備されつつある.日本国内において,感染症指定医療機関の数は増加しているが,各機関の役割や患者移送について今後再検討が必要と考える.