ウイルス
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トピックス1:現代社会の環境とウイルス
げっ歯類由来ハンタウイルスとハンタウイルス感染症
苅和 宏明
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2017 年 67 巻 1 号 p. 25-32

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抄録

 ブニヤウイルス科のハンタウイルスはげっ歯類などの哺乳類を自然宿主とし,感染動物の排泄物を吸引することにより人が感染する.本稿ではハンタウイルス感染症の疫学ならびにげっ歯類とハンタウイルスの相互関係について概説する.ハンタウイルス感染症は腎症候性出血熱(HFRS)とハンタウイルス心肺症候群(HCPS)の二つの病型が知られている.HFRSは高熱,出血,および腎機能障害などを主徴とし,東アジア,ヨーロッパ,ロシアなどのユーラシア大陸で主に発生が見られる.一方,HCPSは急性の心肺機能障害を特徴とし,南北アメリカ大陸において発生が見られる.日本の近隣諸国では,ロシア,中国,韓国などでHFRSが多発しており,原因ウイルスが複数存在していることが明らかになっている.わが国では1985年以降ハンタウイルス感染症の発生はないものの,北海道に生息するエゾヤチネズミがウイルスを保有している.ハンタウイルスと宿主の間で,長年にわたる共進化が進行してきたものと考えられており,ハンタウイルス感染症の発生地域は病原性のあるハンタウイルスを保有した宿主の生息域と密接に関わっている.

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© 2017 日本ウイルス学会
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