2007年に10~20代を中心とする大規模な全国流行が発生した.麻疹に関する特定感染症予防指針を告示し,麻疹排除を目標に国を挙げた対策が開始された.2008年も引き続き1万人を超える大規模な全国流行となり,0~1歳の乳幼児と10~20代の若年成人が多数罹患した.多くは予防接種未接種,1回接種あるいは接種歴不明であった.2009年から患者数は激減し,日本の土着株と言われた遺伝子型D5の麻疹ウイルスは2010年5月を最後に検出されていない.海外からの輸入例を発端として,2011年と2014年には地域流行が認められたが,早期に終息した.2006年度から麻疹風疹混合(MR)ワクチンによる2回接種制度が始まっていたが,2008年度からの5年間で中学生と高校生に対する2回目のMRワクチンが定期接種化され10代への免疫強化がなされた結果,2歳以上のすべての年齢層で95%以上の抗体保有率が維持されている.2015年3月には,WHO西太平洋地域事務局から日本の麻疹排除が認定された.2017年はアジアあるいはヨーロッパからの輸入例を発端とした成人での集団発生が相次いだが,地域の保健所を中心とした積極的な対策により早期の終息宣言がなされている.麻疹排除認定後の年間患者報告数は200人未満である.
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