抄録
抗HCV治療薬はここ数年,抗ウイルス薬の開発史上類を見ない速さで新薬の上市が進んでおり,その治療成績は著しく改善してきた.一方で,ごく短期間に多くの新薬が開発されたため,個々の薬が持つ性質や特性上の相違点,最適な組み合わせ,薬剤耐性ウイルスに効果を発揮する薬剤の選択,等の深い議論がほとんど行われず,限られた組み合わせの多剤併用療法が用いられてきた.我々はすでに市販されている,もしくは臨床開発段階の抗HCV薬15種の抗ウイルス活性を培養系で定量し,またこの基礎データを用いた数理モデル解析により,各薬剤の薬効プロファイルを表現するパラメータを導き出した.さらに,コンピュータシミュレーションの援用により現在主流の2剤併用療法および今後の導入が想定される3剤併用療法での,抗ウイルス効果と耐性変異ウイルスの出現リスクを解析し,多剤併用療法の有用性を定量的に議論した.本稿では,従来のウイルス学に数学を組み合わせた融合研究による抗ウイルス薬の特性解析手法とその応用について解説する.