抄録
ポリオーマウイルスはエンベロープを持たない小型二本鎖DNAウイルスである.エンドサイトーシスにより宿主細胞に侵入した後に小胞体へと輸送され,小胞体のタンパク質の品質管理機構を巧みに利用し細胞質へと移行した後,細胞質から核内へ侵入し感染を成立させる.この原形質膜から小胞体を仲介して細胞質へ到達する感染経路は,ポリオーマウイルスに特異的である.小胞体から細胞質への移行はポリオーマウイルス感染を決定づけるステップでありながら,未だメカニズムの全容解明に至っていない.本稿では,ポリオーマウイルスが小胞体から細胞質へ逆行輸送される分子機構に関する知見について,サルポリオーマウイルスであるSV40を用いた研究結果を中心に解説する.