ウイルス
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特集:昆虫ウイルスの最前線
昆虫培養細胞に潜在感染するBombyx mori latent virus
岩永 将司
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ジャーナル オープンアクセス

2019 年 68 巻 2 号 p. 137-146

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抄録
 Bombyx mori latent virus(BmLV)はチモウイルス科に属する未分類のプラス鎖RNAウイルスである.BmLVは植物ウイルスに類縁性を示すものの,節足動物であるカイコの培養細胞でのみ旺盛に増殖する.また,生活環は未解明であるものの,BmLVはほとんど全てのカイコ由来培養細胞へと既に混入している.我々は,BmLVの増殖メカニズムを明らかにするために,BmLVの陰性培養細胞の樹立や不活化法の開発,宿主域の解析を進めてきた.更に,BmLVの持続感染メカニズムに着目し,BmLVの急性感染細胞ではsmall interfering RNA(siRNA)を介したRNAサイレンシングが引き起こされること,そしてBmLVの持続感染細胞では,siRNAだけではなくPIWI-interacting RNA(piRNA)を介したRNAサイレンシングが引き起こされることを見出した.本稿では,BmLVの発見からその持続感染メカニズムの一端の解明までを筆者らが得た知見を踏まえながら紹介する.
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© 2019 日本ウイルス学会
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