抄録
生体内において最も産生量の多い抗体であるIgA抗体はインフルエンザのように粘膜組織を標的とした感染症に対する生体防御の最前線防御因子として機能している.経鼻ワクチンにより粘膜免疫の中核をなすIgA抗体を自在に制御することができれば,有効性の高いインフルエンザワクチンの開発に繋がることが期待できる.最近の我々の研究により,呼吸器粘膜に存在する二量体よりも大きな四量体などの多量体分泌型IgA(SIgA)抗体がインフルエンザウイルス感染防御に重要であることが明らかになってきた.さらに,四量体SIgA組換え抗体作製技術を用いて作製された同一抗原認識部位を持つ様々な四次構造の抗体の抗ウイルス活性比較検討により,IgA抗体の四量体化は抗体の最大活性を変化させずに抗ウイルス活性の標的域を拡張させることに寄与していることが明らかになった.これらの研究結果は,二量体以上の多量体SIgA抗体のインフルエンザウイルス感染防御における重要性を強調するとともに,従来のインフルエンザワクチンにはない経鼻インフルエンザワクチンに特有のワクチン有効性発現機序の一端を明らかにするものである.