ウイルス
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総説
B型肝炎ウイルス感染培養系の開発
赤堀 祐一土方 誠
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2020 年 70 巻 2 号 p. 135-146

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抄録

 B型肝炎ウイルス(hepatitis B virus; HBV)は急性肝炎や慢性肝炎,肝硬変,そして肝がんといった慢性肝疾患の原因ウイルスである.1979年にそのウイルス遺伝子がクローニングされていたが,HBVの感染増殖を分子ウイルス学的解析するために必須である細胞培養系の開発が進んでいなかった.そのためHBV生活環の全容解明とそれを基にした創薬研究の進展が遅れていた.しかしながら,2012年にHBV感染受容体としてナトリウム-タウロコール酸共役輸送体(Na+-taurocholate co-transporting polypeptide; NTCP)が同定された.この分子を安定発現させた肝がん由来細胞株を用いることで,これまで得られなかったHBV生活環の特に感染・侵入のステップを再現することが可能になったため,このステップの分子機構に関する新しい知見や,そのステップを標的とした抗HBV薬候補が次々と得られている.一方,がん細胞を用いたこれらのHBV培養系ではなく,本来のヒト肝細胞に類似した細胞を用いたHBV培養系を開発して,生理的なHBVと肝細胞との相互作用を研究する試みも進められている.本稿では,これら研究の進展を概説し,また我々が,NTCPを発現させた不死化肝細胞株を用いて開発した新たなHBV感染細胞培養系について紹介する.

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