抄録
ムンプスウイルス(MuV)は,耳下腺炎,睾丸炎,卵巣炎,髄膜炎,脳炎,難聴などを引き起こす重要なヒトの病原体である.流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)はワクチンで予防できる疾患だが,世界中で散発的に発生しており,ワクチン接種率の高い地域でも発生が確認される.MuVは全身に感染するだけでなく,腺組織や中枢神経系に特異的なトロピズムを持っているが,そのメカニズムは未解明な部分が多く残されている.本トピックスでは,糖鎖受容体,特に最近同定された三糖コア受容体構造,及び,糖鎖受容体とウイルス受容体結合蛋白質の相互作用に焦点を当て,MuVによる柔軟な糖鎖受容体認識機構および糖鎖分布とトロピズムとの相関性についてまとめ,MuVの病原性について考察する.