抄録
ロタウイルスワクチンが導入されて以降,ヒトノロウイルスは最も重要な急性胃腸炎起因ウイルスである.特に小児や高齢者では重症例が見られ,発展途上国では未だに小児下痢症による死亡の主要な原因となっている.遺伝子解析手法の発展によりヒトノロウイルスの疫学は大きく発展したが,未だに新たな遺伝子型が発見されるなど,その多様性の全容はまだ完全には把握されていない.ワクチンは未だ開発途上であるが,細胞培養法の開発が進展したことで,今後,ノロウイルス抗原多様性の研究が進むことが期待される.本稿では,ノロウイルスの疫学,分子疫学の概要とともに,ウイルスの進化と疫学パターンの関連に焦点を当ててこれまでの研究を紹介する.