ウイルス
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総説
ロタウイルス流行株の変遷
藤井 克樹
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2023 年 73 巻 1 号 p. 33-44

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抄録
 ロタウイルスは乳幼児における感染性胃腸炎の主要な原因ウイルスとして知られ,衛生環境によらず世界中に広く存在している.しかし,ロタウイルスの遺伝子型は非常に多彩であり,流行株のシーズン間差や地域差も大きく,全体像を掴むのは容易ではない.幸いにも,現在世界中で広く用いられているロタウイルスワクチンは有効性,安全性ともに高く,特に高所得国ではロタウイルス胃腸炎の患者数は激減しつつある.わが国でも2020年10月からロタウイルスワクチンが定期接種化されたが,その直前に始まった新型コロナウイルス流行対策の影響も大きく,その相乗効果によって近年はロタウイルスの流行はほとんど見られなくなった.とは言え,ロタウイルスの性質上,完全に撲滅できる可能性は低く,実際に少数ながら散発的な報告は続いている.従って,今後も高いワクチン接種率の維持や流行株調査の継続は重要であると考えられる.本稿では,国内および海外におけるロタウイルスの流行状況について概説し,これまでの地道な調査によって明らかになってきた国内流行株の年次変化についても紹介する. 
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