抄録
各種動物赤血球を用いておこなうウイルス学的, 血清学的試験に, 凍結保存赤血球を利用する目的で, 解凍赤血球の性能について試験をした結果, ヒト, ミドリザル, ヒツジ, モルモット, ニワトリおよび1日ビナ赤血球は, 非凍結赤血球と同様, 各種試験に使用できる成績を得た. すなわち, 上記各種動物凍結保存赤血球は, おのおの, 赤血球吸着, 赤血球凝集, 補体結合および免疫粘着反応に関与する特異的な性能を長期間保持していることを確認した.
1. ヒトO型, ミドリザル, ヒツジおよびモルモット赤血球の血球沈渣を28w/v% glycerol, 3% mannitol, 0.65% NaCl液と等量混合し, 急速凍結, 液体窒素保存で長期に亘り保存できた.
2. ニワトリおよび1日ビナ赤血球については, 血球沈渣を51.5w/v% dimethylsulfoxide (DMSO), 8% glucose, 1% fructose および0.3% EDTA-2Naからなる凍害防止液とを等量混合し, 緩速凍結後, -85℃で保存する方法が有効であった.
3. 急速解凍後の脱グリセリンあるいは脱DMSOは十分量の16w/v% mannitol, 0.9% NaCl液で希釈する方法がよく, 等張液で洗浄し, 目的とする緩衝液におきかえた時点での回収率は, ヒト, サル, モルモットでは80%以上, ヒツジ, ニワトリでは65~80%, 1日ビナでは40~50%であった.
4. 解凍赤血球は, 浸透圧に対する抵抗性が減弱する動物種もあったが, 少なくとも各種ウイルス学的, 血清学的反応に関与する表面構造は, 凍結, 解凍により障害を受けておらず, 非凍結の同種赤血球に匹敵する性能を示した.