1972年岩見沢市において通年発生した小児感染症について, 腸内ウイルスを主とした検索を行なったところ, Coxsackie A群2型, 5型, 10型が分離され, これらのウイルスによる疾患に関して次のような結果を得た。
1. Coxsackie A群ウイルスの分離された小児感染症の臨床症状は多様をきわめ, それらを大別すると, 発疹症が22.7%でもっとも多く, つぎにヘルパンギーナの19.0%, 急性上気道炎が16.8%, アフタ様口内炎が7.7%であった。実際にはこれらの併発症が多く, ヘルパンギーナおよびこれに併発した疾患を併せると39.5%, 発疹症およびこれに併発した疾患は37.7%となり, 両者の占める割合は77.2%となり, 症状の多彩性が浮き彫りにされた.
2. ヘルパンギーナ, アフタ様口内炎, 発疹症など同一疾患に反復罹患した患児9例をみた. 再罹患までの間隔は, 最短が21日で, 最長が153日であった. このうち6例から初罹患の際と同型の Coxsackie Aウイルスが分離された. この際に, 中和抗体価陰性であった5例のうち4例は, 30日以内に同型のウイルスによって再罹患をみている, すなわち, 発病しても抗体産生のみられない場合には, 短時日に再発病することが示された.
また, 別の2例は, 初罹患の際の回復期血清に Coxsackie A群5型に対して128倍の抗体価の保有を示したにもかかわらず, 83日と153日後に再罹患し, 同型のウイルスが分離され, 抗体価の低下が示唆された.
3. 異なった疾患に反復罹患した患児が7例あった. 反復罹患までの間隔は, 最短が61日, 最長が177日であった. これらのうち3例は初罹患と反復罹患から分離されたウイルスが異なっていた.
4. 同胞および家族内罹患者が12組27例あった. 発病間隔は, 同日が3組, 2日が4組, 3日と4日が各2組, 10日が1組で, 各組それぞれ同型のウイルスが分離された.
5. 517件の材料から, Coxsackie A群2型が18株 (3.5%), 5型が195株 (37.7)%, 10型が127株 (24.6%), 6型と9型が各1株 (0.02%), Polio I型が3株 (0.05%), ECHO 6型が1株 (0.02%), 未同定のウイルスが5株 (1.0%), 合計352株 (68.1%) をそれぞれ分離した.
6. 患児のペア血清80例の陽性率は46例 (57.5%) で, 2種以上のウイルスに対して同時に抗体価の上昇を示したものを含めて, 型別成績は Coxsackie A群2型が6例 (7.5%), 4型が10例 (12.5%), 5型が15例 (18.6%), 6型が5例 (6.2%), 10型が22例 (27.5%), 16型が8例 (10.0%) にそれぞれ有意の抗体価上昇を認めた.
抄録全体を表示