ウイルス
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ウイルスの臓器向性を規定する組織プロテアーゼの研究
後藤 敏
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1992 年 42 巻 2 号 p. 119-131

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抄録

パラミクソウイルスの膜融合 (F) 蛋白質は細胞膜とウイルス被膜の膜融合のプロセスを媒介し, 感染の開始に重要な役割を演ずる。F蛋白質は宿主プロテアーゼにより切断をうけ初めて活性を獲得するので, この宿主のウイルス活性化プロテアーゼ (VAP) は感染性ウイルスの産生に不可欠な因子である。本研究により基質特異性と発現組織分布の異なる二種類のVAPが同定された。遍在性の furin/PACE は構成的分泌経路で働くプロセシングプロテアーゼであり, RXR/KR切断モチーフのF蛋白質を活性化する。ニワトリ胚における活性型凝固第十因子 (FXa) は羊水, 尿液に存在し, Q/EXRモチーフのF蛋白質を活性化する。ウイルス増殖組織とVAPの組織分布は厳密に一致し, 遍在性の furin/PACE を利用するウイルスは全身感染を起こし, FXa のような組織特異的プロテアーゼで活性化されるウイルスは局所感染に終わる。ウイルスの臓器向性がVAPによって規定されることが宿主因子の側から初めて証明された。

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© 日本ウイルス学会
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