ウイルス
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菌類で媒介される beet necrotic yellow vein virus
玉田 哲男
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1994 年 44 巻 1 号 p. 43-47

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抄録
Beet necrotic yellow vein virus (BNYVV) は, テンサイそう根病の病原ウイルスであり, 土壌菌 Polymyxa betae によってうつされる。ウイルス粒子は桿状で, 21K外被タンパク質と1本鎖RNAから成る。RNA1~5の5種類のRNAがみつかっており, RNA-1と2は感染に必要であるが, RNA-3, 4, 5はサテライト様である。RNAゲノムはいずれも5′末端がキャップ構造, 3′末端がポリ (A) 配列である。RNA-1には, 237Kのタンパク質をコードするORFが存在し, RNA複製酵素と共通の配列が認められる。RNA-2には, 6個のORFが存在し, 5′末端側には21K外被タンパク質, つづいて54Kタンパク質をコードするORFが存在する。このタンパク質は, 外被タンパク質の読み過ごしとしてそのN′末端を含み, 75Kタンパク質として翻訳される。このタンパク質は,ウイルス粒子の組立てと菌伝搬性に重要な役割を果たしている。さらに3′側の3個のORFには, それぞれ42K, 13K, 15Kタンパク質がコードされ, これらはトリプロブロックジーンと呼ばれ, ウイルスの細胞間移行に関与している。RNA-2の3′末端側には, システィン豊富な14Kタンパク質がコードされている。RNA-3には, 25Kタンパク質のORFが存在し, これは検定植物 (ツルナ) の黄色斑形成とテンサイのそう根症状の発現に関わっている。31Kタンパク質をコードするRNA-4は, P. betae菌のウイルス伝搬効率を高める働きがある。以上, BNYVVに存在する4種のRNAは, それぞれ機能分担しており, ウイルスが自然で病気を起こし, 存続するために必須であると考えられる。
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© 日本ウイルス学会
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