抄録
プリオン仮説が提唱されてから約20年の歳月が流れた. この間に英国で牛海綿状脳症の多発とそれからの感染とされる変異型クロイツフェルト・ヤコブ病 (vCJD) の発症が相次ぎ, また日本では硬膜移植による医原性CJDが多発するなどプリオン病の診断技術の確立と治療法の開発が急務の課題となっている. 散発性CJDについては Parchi らが遺伝子多型と蛋白分析による新分類を提唱し今後の症例分析の基礎を築いた. 治療分野での研究進歩は目覚しく一部では高次構造変換を阻害する薬剤の臨床治験が始まり, また免疫系の修飾による発症予防も動物実験段階で試みられつつあるが, これらが有効に行なわれるためには早期に確定診断がされる必要がある. これについては拡散強調MRI画像所見の検討や髄液14-3-3蛋白測定の他, 尿や髄液中の異常型プリオン蛋白の直接的証明が試みられ, また異常型プリオンと特異的に結合する物質も報告されている.