抄録
今回, WHO/UNAIDSを中心としたエイズ予防対策の変遷と展望について述べる. WHOでエイズ対策が始まったのは米国でエイズが報告されてから数年経ってからであった. 1985年頃WHOでは, この新しい疾患の規模や深刻さを把握するだけの十分な情報を持っていなかったので, 本格的な活動をまだ行っていなかった. しかし, 世界中からエイズ患者の発生が次々と報告されてきたことから, 事態は急展開していった. 当時の事務局長マーラー氏は1987年, エイズを他の感染症対策から切り離して特別対策本部 (SPA) を設立し, 加盟国での実態把握, 対策作りなどの予防対策のための世界戦略を確立した. 翌年にSPAはエイズ世界対策本部 (GPA) に名称替えされ, 本部の活動がいっそう強化された. エイズ問題の性質上, GPAの活動は, 加盟国におけるサーベイランス, 検査体制の確立とカウンセリング, 加盟国のエイズ対策支援, 教育, 人権と差別など多岐に渡った. しかしながら, WHOは1995年末, その最大のプロジェクトを手放さなければならなくなった. 翌年WHOのエイズ活動は「国連エイズ合同計画」(UNAIDS) に引き継がれ現在に至っている.