抄録
4~72 カ月齢のビーグル犬51頭を用いて,形態計測により心臓の発達・成熟過程について検索した。その結果,心臓重量,左心室壁厚,心室中隔壁厚,右心室壁厚,左心室壁面積はいずれも18ないし24 カ月齢まで急速に増加し,それ以降72 カ月齢に至るまでの増加は緩徐であった。心臓重量・体重比および左心室重量・体重比は4~18 カ月齢で漸次増加し,その後おおむね一定の値で推移した。心筋細胞の断面積は18ないし24 カ月齢まで急速に増加したが,それ以降72 カ月齢に至るまでの増加は緩徐であった。一方,心筋細胞の長さは18 カ月齢までは漸次増加したものの,24 カ月齢以降はおおむね一定の値で推移した。すなわち,ビーグル犬の心臓では18 カ月齢までは心筋細胞の長さと断面積がともに増加するため,心臓重量,心室壁厚,左心室壁面積はいずれも急速に増加するが,それ以降,心筋細胞の長さの増加は止まり,心筋細胞断面積の増加も緩徐になるため,心臓の各計測値の増加も緩やかになった。以上の結果から,ビーグル犬では18 カ月齢をもって心臓が一応の形態的成熟に至るものとみなされた。