抄録
本研究は,ジゴキシンを処方した慢性心不全犬でジゴキシン中毒と臨床徴候の発現について検討を行った。ジゴキシン中毒の発現した14頭のジゴキシン処方前とジゴキシン中毒時における体温,体重,消化器症状,腎機能の変化を評価した。体温はジゴキシン中毒時に有意な低下を示した。血清ジゴキシン濃度の増加に比例してクレアチニン,BUNは上昇し,消化器症状(食欲不振と嘔吐ならびに下痢の比較) が発現した。ジゴキシン中毒徴候は血清ジゴキシン濃度 ≥2.0 ng/ml で増加した。これらのことから,ジゴキシン中毒では血清ジゴキシン濃度の測定に加えて体温や体重の変化,消化器症状,腎機能(クレアチニンならびにBUN)を評価することで,ジゴキシン中毒の重症度評価ならびに副作用に対するインフォームドコンセントの指針になることが示唆された。