抄録
我々はビーグル犬にSeldinger法を用いて大腿動静脈に種々のカテーテルを挿入し,心血行動態や心臓電気生理学的指標の同時計測を行い,多数の薬物の心臓電気薬理学的作用を20年以上にわたり評価してきた。今回,同様にSeldinger法を用いて大腿動脈にカテーテルイントロデューサーを挿入した際に,外腸骨動脈に裂孔を形成し,同部位からの出血による死亡例を経験した。このような事例は初めてのことである。本例は心臓カテーテル検査のために6週間前に穿刺と止血を行った履歴はあるが,通常と変わることはなかった。しかしながら,この時の止血操作が大腿動脈の狭窄を誘発し今回の事故の原因となったと考えられた。Seldinger法による大腿動脈穿刺はヒトだけでなく,獣医臨床の場でも近年一般的に使用され得る手法であることから,注意を喚起する意味で報告する。