2018 年 51 巻 2 号 p. 61-66
薬物誘発性のTorsades de Pointes (TdP)は致死性の多形性心室頻拍であり,1990年代から2000年代に多数報告がなされ,医薬品市場から撤退あるいは開発のハードルとなってきた。この状況に対応すべく,各国の医薬品規制当局と製薬業界で構成される医薬品規制調和国際会議(International Council for Harmonisation of Technical Requirements for Pharmaceuticals for Human Use; ICH)では,QT間隔の延長をTdPの代替マーカーとして評価するための手法をガイドライン化し,非臨床試験評価法として浸透してきた。その後,一つのチャネル評価のみではイオンチャネルの総和としての催不整脈作用を評価しきれておらず,また,QT間隔の延長評価では催不整脈作用が直接評価されていないために,有望な医薬品候補化合物がドロップアウトするという弊害も明らかになってきた。そこで,近年,in vivo試験およびin silico(コンピュータを用いた予測)などを用いた新たな評価系が模索されつつある。本稿では,現在の薬物誘発性不整脈評価方法を紹介するとともに,今後の展望を紹介する。