動物の循環器
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総説
脈波速度を用いた血管の硬さの評価
勝田 新一郎
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2022 年 55 巻 1 号 p. 1-14

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抄録

動脈は末梢組織に血液を供給するための導管であると考えられていたが,近年は動脈壁,とりわけ内皮細胞から様々な生理活性物質が合成・分泌され,血管壁の緊張度のコントロールをはじめ,壁のリモデリングにも関与することが明らかにされている。動脈の硬さは血圧にも影響を与えうる。犬,猫ではヒトと比較して,高血圧,高脂血症,腎臓病,糖尿病に罹患する頻度は少ないが,近年は犬も猫も寿命が延びており,上記疾患の報告も増加傾向にある。高血圧が持続すると脳,眼,動脈,心臓,腎臓を中心に器質的障害を引き起こすことが指摘されている。高脂血症の持続は粥状硬化の原因であり,慢性腎臓病は二次性高血圧の原因でもある。とりわけヒトでは,動脈壁のリモデリングは主要臓器の障害と関連することが数多く報告されているので,血管壁の硬さを客観的に評価することが重要である。脈波速度(pulse wave velocity; PWV)は非侵襲的かつ簡便に計測することが可能で,動脈壁の硬さの直接的指標として世界中で広く用いられている。獣医学領域においても将来,血圧測定のみならず動脈壁の硬さを客観的に評価することができれば,臓器障害の予測にもつながると考えられる。

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© 2022 日本獣医循環器学会
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