動物の循環器
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総説
  • 勝田 新一郎
    2022 年 55 巻 1 号 p. 1-14
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/18
    ジャーナル フリー

    動脈は末梢組織に血液を供給するための導管であると考えられていたが,近年は動脈壁,とりわけ内皮細胞から様々な生理活性物質が合成・分泌され,血管壁の緊張度のコントロールをはじめ,壁のリモデリングにも関与することが明らかにされている。動脈の硬さは血圧にも影響を与えうる。犬,猫ではヒトと比較して,高血圧,高脂血症,腎臓病,糖尿病に罹患する頻度は少ないが,近年は犬も猫も寿命が延びており,上記疾患の報告も増加傾向にある。高血圧が持続すると脳,眼,動脈,心臓,腎臓を中心に器質的障害を引き起こすことが指摘されている。高脂血症の持続は粥状硬化の原因であり,慢性腎臓病は二次性高血圧の原因でもある。とりわけヒトでは,動脈壁のリモデリングは主要臓器の障害と関連することが数多く報告されているので,血管壁の硬さを客観的に評価することが重要である。脈波速度(pulse wave velocity; PWV)は非侵襲的かつ簡便に計測することが可能で,動脈壁の硬さの直接的指標として世界中で広く用いられている。獣医学領域においても将来,血圧測定のみならず動脈壁の硬さを客観的に評価することができれば,臓器障害の予測にもつながると考えられる。

原著
  • 佐々木 崇文, 町田 登
    2022 年 55 巻 1 号 p. 15-28
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/18
    ジャーナル フリー

    In order to examine the relationship between underlying heart diseases and lesions of the atrioventricular (AV) conduction system in dogs with third-degree AV block, the hearts of 36 dogs in which the arrhythmia had been diagnosed electrocardiographically were studied post mortem. On histologic analysis, underlying heart diseases were observed in 31 of the 36 dogs: lymphocytic myocarditis (13 dogs), endocardiosis of the AV valves (12 dogs), congenital anomalies (two dogs), cardiac tumors (two dogs), and fatty infiltration of the lowermost portion of the atrial septum (two dogs); the remaining five dogs, however, had no remarkable changes. In all of the 31 dogs, loss and disappearance of conduction fibers were found in the AV node (AVN) and its approaches (AVNap), the penetrating (HisP) and branching (HisB) portions of the His bundle, and/or the left and right bundle branches to various degrees. The main location of the severe lesions was as follows: the whole of the AV conduction system in the case of lymphocytic myocarditis; the HisP and HisB in the case of AV valve endocardiosis; the HisP in the case of congenital cardiac anomalies; the AVNap, AVN, HisP and/or HisB in the case of cardiac tumors; AVNap in the case of fatty infiltration. Thus, it is suggested that the pathological process affecting the AV conduction system has caused third-degree AV block and that some relationship between the affected portion of the AV conduction system and the underlying heart disease seems likely.

症例報告
  • 荒木 隆次, 岩永 孝治, 井坂 光宏
    2022 年 55 巻 1 号 p. 29-34
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/18
    ジャーナル フリー

    症例は雄,体重3.2 kg, 5ヶ月齢の雑種猫であり,心雑音の精査を目的に来院した。心臓超音波検査において,拡張期に左心房から左心室へと流れるモザイク血流,僧帽弁の開放制限及び前尖のドーミング所見,後乳頭筋の低形成,左房拡大が認められた。以上より我々は本症例を僧帽弁狭窄症と臨床診断した。またとくに後乳頭筋において低形成所見を認めたことから,僧帽弁狭窄症の原因としてパラシュート様僧帽弁による僧帽弁装置の異常を疑った。臨床徴候は認められず,飼い主の希望により無治療による経過観察を続けた。その後第883病日まで経過を追っているが心臓超音波検査における変化は認められず,臨床徴候も認められなかった。猫において,パラシュート様僧帽弁に類似した所見が得られた僧帽弁狭窄症の症例報告は初であり,人では予後不良の病態であるため,本症例は今後も注意して経過をみていく必要がある。

臨床ノート
  • 小宮 みぎわ, 岡本 芳晴
    2022 年 55 巻 1 号 p. 35-41
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/18
    ジャーナル フリー

    家庭用塩素系洗浄剤(主成分は次亜塩素酸ナトリウム)の暴露により,呼吸器障害ならびに一過性心筋傷害が引き起こされたと考えられる猫の,詳細な臨床経過を観察することが出来たので,報告する。本症例は,第3病日に呼吸促迫を呈し,胸部X線検査では明らかな心拡大が認められた。胸腔内にわずかな胸水貯留,腹側にびまん性肺胞パターン,左右肺動脈の重度拡大が認められた。心エコー検査では右心系の拡張,心室中隔の扁平化,肺動脈の拡大,三尖弁と僧帽弁の逆流を確認した。第6病日には胸水貯留量の増加が認められたため,抜去した。血清心筋トロポニンIは8.441 ng/mlと著しく高値を示した。本症例はその後,治療に反応して次第に状態は改善し,第32病日に心拡大,三尖弁/僧帽弁の逆流が認められなくなった。3年が経過したが,本症例の血清心筋トロポニンは0.050 ng/mlであり,心エコー検査においても心筋症を疑う所見はない。

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