動物の循環器
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臨床ノート
心内膜の線維性肥厚が右心系に主座していた拘束型心筋症の猫の1例
和田 智樹 藤原 彬町田 登森 拓也
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2023 年 56 巻 2 号 p. 107-111

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抄録

15歳の雑種猫が呼吸困難を主訴に来院した。胸部X線検査にて胸水の貯留が認められ,各種検査から右心不全に伴う胸水貯留と診断された。内科治療により一時的な改善は得られたものの,一般状態が漸次悪化し第1060病日に死亡した。病理学的検索において特に目立った病変は,右心系の心内膜にみられた顕著な線維性肥厚であった。右房ではほぼ全域にわたって中等度~重度に肥厚し,灰白色でまだら状を呈していた。同様の心内膜肥厚は,右房に比べて軽度ではあったが,右室の流入路でも観察された。一方,左心系では左室流出路を中心に大動脈弁を巻き込む形で,心内膜が軽度~中等度,一部では重度に肥厚していた。こうした心内膜病変は,組織学的に特徴的な2層構造を有しており,心内膜心筋型拘束型心筋症と病理診断された。猫の拘束型心筋症の病的機転は左心系に発生するのが一般的であるが,本例のように右心系に主座する例もあることが明らかになった。

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© 2023 日本獣医循環器学会
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