抄録
右室肥大牛7例,左室肥大牛2例,正常育成牛11例及び搾乳牛24例を用いて,心電図の平均電気軸とQRS群の波形の変化を検討し,以下の結果を得た。
1)ウシの平均電気軸の算出には,標準肢誘導は適当ではなく,菅野らの提唱する胸部双極誘導法(矢状面)とCV6RU-CV6LU-CV6LLを誘導点とする胸部双極誘導法(横断面)によって得られた平均電気軸とベクトル心電図の半面積ベクトルが相関した。
2)右室肥大牛は,AB誘導のQRS群の陰性電位の増高,横断面の平均電気軸の右方変位,CV6LL及びCV6LU誘導で陰性電位の増高,CV6RL誘導で極性不定の電位の増高,CV6RU誘導で陽性電位の増高が観察された。
3)左室肥大牛は,AB誘導のQRS群の陽性電位の増高,矢状面及び横断面の平均電気軸の尾上方及び左方変位,CV6LL及びCV6LU誘導の陽性電位の増高,CV6RL及びCV6RU誘導の極性不定の電位の増高が観察された。
4)右室または左室肥大により,AB誘導のQRS持続時間は延長しなかった。
5)泌乳などにより心負荷が起こるとの推測は,平均電気軸では証明されなかった。