抄録
実験動物として汎用されているラット,マウスおよびモルモットを対象に,生後の発育過程における心機能の発達経過の一端を明らかにする目的で,1日齢から90日齢までの成長にともなう心拍数および興奮伝導時間の推移を調べた。
1)ラットおよびマウスの心拍数は,5日齢頃までぼ300~400回/分のレベルで比較的安定しているが,14~30日齢では一時的にそれぞれ530~620回/分および750回/分前後まで増加した。一方,モルモットの心拍数は成長にともない軽度に漸減する傾向にあった。
2)PQおよびQT間隔はラット,マウスの場合,5日齢以降,成長にともなって短縮し,モルモットでは逆に延長した。これらとRR間隔との間にはモルモットのPQ間隔を除き,すべてに正の相関関係が認められた。
3)QRS群持続時間は,いずれの動物種においても成長にともなって軽度に延長した。
4)マウスは,1日齢の時点で既にST部分が識別されず,ラットでは成長にともないST部分の短縮,消失するのが観察された。一方,モルモットでは成熟段階でも明瞭なST部分が認められた。