動物の循環器
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急性的塩化カルシウム高負荷がビーグル犬の血清電解質濃度,心電図,血圧および体温におよぼす影響
中田 義禮佐村 恵治宮沢 英男近藤 秀男成瀬 信次木川 孝鈴木 順松本 浩良菅野 茂
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1993 年 26 巻 2 号 p. 49-64

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抄録

高カルシウム血症における循環器系の病態生理の一端を明らかにする目的で, ペントバルビタールナトリウム麻酔下のビーグル犬にCaCl2を2時間にわたり持続的に静脈内投与し, 投与中から投与後に至るまでの血清電解質濃度や心電図, 血圧, 体温に現われる経時的変化を観察した。
雄のビーグル犬4頭 (12~19カ月齢, 体重9.1~12.3kg) に, 2週間以上の間隔をおいて, CaCl2 60, 120および240mg/kgを, infusion pumpを用いて0.7ml/minの割合で2時間にわたり静脈内持続投与を行った。
なお,対照例として0.9%NaClを静脈内投与した。
1. CaCl2持続投与中の血清カルシウム濃度は, 投与量に比例して, 持続投与中は徐々に増加した。血清カルシウム濃度が最も高かったのは, 240mg/kg投与例で持続投与終了時に 23.1mg/dl を示し, 投与前値の2.3倍となった。投与終了後, 緩やかに減少し, 24時間後に投与前値まで回復した。また, CaCl2持続投与により血清ナトリウム濃度は血清カルシウム濃度とは逆に有意な低下を示した。一方, 血清カリウムおよび血清クロライド濃度については,CaCl2投与による影響はほとんど認められなかった。
2. QT間隔について心拍数100を基準にして補正した QTc100 で比較すると, 対照例に比べて投与終了後1時間まで軽度の短縮がみられた。QRS群持続時間およびPR間隔は逆に延長する傾向にあった。また, ST分節は, 用量依存的に上昇する傾向がみられた。一方, P波振幅, R波振幅, S波振幅およびT波振幅には, CaCl2投与による影響はほとんど認められなかった。
3. CaCl2 投与により心拍数は高用量例で持続投与後半および投与終了後約1時間まで対照例に比べて減少する傾向にあった。血圧は, 対照群と比べて明らかな相違を示さなかった。体温およびヘマトクリット値については, CaCl2溶液投与により対照群と比べて投与終了後の回復が遅い傾向にあった。
4. 対照のNaCl投与例では, 投与終了3時間後にはほぼ投与前と同じ覚醒状態に戻ったが, CaCl2投与群は, 投与終了3時間後でもCaCl2 60および120mg/kg投与例の動きが鈍く, 240mg/kg投与例ではまだ昏睡状態にあり, 投与終了6~8時間後になって覚醒状態となった。

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© 日本獣医循環器学会
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