高カルシウム血症における循環器系の病態生理の一端を明らかにする目的で, ペントバルビタールナトリウム麻酔下のビーグル犬にCaCl
2を2時間にわたり持続的に静脈内投与し, 投与中から投与後に至るまでの血清電解質濃度や心電図, 血圧, 体温に現われる経時的変化を観察した。
雄のビーグル犬4頭 (12~19カ月齢, 体重9.1~12.3kg) に, 2週間以上の間隔をおいて, CaCl
2 60, 120および240mg/kgを, infusion pumpを用いて0.7ml/minの割合で2時間にわたり静脈内持続投与を行った。
なお,対照例として0.9%NaClを静脈内投与した。
1. CaCl
2持続投与中の血清カルシウム濃度は, 投与量に比例して, 持続投与中は徐々に増加した。血清カルシウム濃度が最も高かったのは, 240mg/kg投与例で持続投与終了時に 23.1mg/dl を示し, 投与前値の2.3倍となった。投与終了後, 緩やかに減少し, 24時間後に投与前値まで回復した。また, CaCl
2持続投与により血清ナトリウム濃度は血清カルシウム濃度とは逆に有意な低下を示した。一方, 血清カリウムおよび血清クロライド濃度については,CaCl
2投与による影響はほとんど認められなかった。
2. QT間隔について心拍数100を基準にして補正した QTc
100 で比較すると, 対照例に比べて投与終了後1時間まで軽度の短縮がみられた。QRS群持続時間およびPR間隔は逆に延長する傾向にあった。また, ST分節は, 用量依存的に上昇する傾向がみられた。一方, P波振幅, R波振幅, S波振幅およびT波振幅には, CaCl
2投与による影響はほとんど認められなかった。
3. CaCl
2 投与により心拍数は高用量例で持続投与後半および投与終了後約1時間まで対照例に比べて減少する傾向にあった。血圧は, 対照群と比べて明らかな相違を示さなかった。体温およびヘマトクリット値については, CaCl
2溶液投与により対照群と比べて投与終了後の回復が遅い傾向にあった。
4. 対照のNaCl投与例では, 投与終了3時間後にはほぼ投与前と同じ覚醒状態に戻ったが, CaCl
2投与群は, 投与終了3時間後でもCaCl
2 60および120mg/kg投与例の動きが鈍く, 240mg/kg投与例ではまだ昏睡状態にあり, 投与終了6~8時間後になって覚醒状態となった。
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