抄録
ハタネズミおよびスナネズミを対象に出生直後から成熟期に至るまでの発育過程における心拍数および心電図波形の成長に伴う変化について検討した。
1.心拍数の推移
心拍数は出生直後から21日齢までは増加し,それ以後は減少傾向を示した。
2.興奮伝導時間の推移
PR間隔およびQT間隔は出生直後14~21日齢まで急速に短縮し,その後は若干の延長傾向を示した。QRS群持続時間はハタネズミでは多少の増減を示しつつ7日齢までは短縮し,その後延長した。スナネズミでは出生直後からほぼ一定に推移した後90日齢で延長した。またRR間隔とPR間隔およびQT間隔の間には有意な正の相関関係が認められた。
3.心電図棘波振幅の変化
P波,R波およびS波の振幅は,出生直後から加齢に伴って増高し,14~21日齢で最高値に達した後は徐々に減高する傾向を示した。T波の振幅は7日齢まで余り増高しなかったが以後急速に増高し,21日齢で最高値に達し,その後次第に減高した。
4.平均電気軸の推移
若齢においては右尾側方向を示すものが多かったが,成長に従い左尾側方向を示すものが大勢を占めた。
5.ST-T部分の変化
新生仔期にはST-segmentが認められたが,成長に伴って14日齢ではほとんどの個体にST-segmentが認められなくなった。ハタネズミでは成熟期に至るとST-junctionが認められない個体もいたが,スナネズミでは成熟個体でも全例でST-junctionが認められた。
以上のようにハタネズミおよびスナネズミの心電図各パラメーターは離乳期を境界点として成長に伴う変化の様式が変わることが明らかとなった。また成熟期にもST-junctionの認められる個体が存在するなどラットと類似した波形上の特徴を有していた。