動物の循環器
Online ISSN : 1883-5260
Print ISSN : 0910-6537
ISSN-L : 0910-6537
シバヤギおよび日本コリデール種のヒツジにおける冠状動脈の走行に関する形態学的観察―特に洞房結節動脈について
中村 孝町田 登小田部 晶桐生 啓治
著者情報
ジャーナル フリー

1996 年 29 巻 2 号 p. 99-109

詳細
抄録

シバヤギ5例と日本コリデール種のヒツジ(日本コリデール)3例の冠状動脈が死後冠状動脈造影法,組織透徹法及び間断連続切片作成法の各方法によって形態学的に観察された。検索は洞房結節動脈の由来及びその走行を中心とし,シバヤギと日本コリデールの両者の所見を対比しながら検討した。
1.4例のシバヤギの左冠状動脈回旋枝は中間溝の部位より冠状溝を外れ,洞下室間溝のほぼ1/2部分に向かって左心室遊離壁を斜めに下行し洞下室間枝となった。これに対して他の1例のシバヤギ及び3例の日本コリデールの左冠状動脈回旋枝は起始部から洞下室間溝に達するまで冠状溝に沿って走行していた。またシバヤギ5例の右冠状動脈は冠状溝に達した後,洞下室間溝のほぼ1/2部分に向かって右心室遊離壁を斜めに下行して終止していた。一方,日本コリデールの右冠状動脈は冠状溝に沿って走行し,洞下室間溝起始部に向かって走行して終止していた。
2.シバヤギ5例の心房枝は左冠状動脈回旋枝から近位にL1,遠位にL2が存在していた。そして右冠状動脈由来分枝として近位にR1のみが存在していた。一方,日本コリデールにおいて,心房枝は6本より構成され,それらは左冠状動脈回旋枝由来の分枝としては,近位にL1,中間部位にL2,遠位部にL3,左冠状動脈洞下室間枝の後中隔枝からの1分枝としてL4,右冠状動脈由来の分枝としては近位にR1,遠位にR2であった。
3.洞房結節動脈は,シバヤギ5例ではR1より成り洞房結節外を走行していた。日本コリデール3例においてはL1より成り立ち,1例は洞房結節内を走行していたが,他の2例はシバヤギと同様に洞房結節外を走行していた。このように冠状動脈の走行,および洞房結節動脈の由来及びその走行は動物の種類によって異なった所見を示すのみならず,品種間の違いによっても異なった所見を示す可能性が考えられた。

著者関連情報
© 日本獣医循環器学会
前の記事
feedback
Top