抄録
レースバト18羽およびドバト48羽を用いて心電図学的検索を実施し, ハトに自然発生する不整脈の発生状況について比較検討した。心電図記録は標準双極肢誘導 (I, IIおよびIII) により,無麻酔, 無拘束, 安静状態下で行った。不整脈はレースバトの全例 (100%) ならびにドバトの24例 (50.0%) に認められ, レースバトでの発生率はドバトよりも有意に高かった。観察された不整脈の種類および発生率は,レースバトでは洞性不整脈18例 (100%) , 洞房ブロックあるいは洞休止11例 (61.1%) , 第2度房室ブロックMobitz I型 (Wenckebach型) 6例 (33.3%) ならびに心室性期外収縮3例 (16.7%) であった。一方,ドバトでは洞性不整脈12例 (25.0%) , 洞房ブロックあるいは洞休止12例 (25.0%) , 第2度房室ブロックMobitz I型1例 (2.1%) ならびに第2度房室ブロックMobitzII型4例 (8.3%) であった。今回の検索結果から, レースバトはスポーツ心臓に関連して生ずる不整脈の研究に適した動物であること, ならびにレースバトでの不整脈の発生状況はサラブレッド競走馬でのそれと多くの共通点を有していることが明らかになった。