2012 年 35 巻 11 号 p. 187-195
2011年8月から12月にかけて,タイ王国を南北に流れるチャオプラヤ川の流域で大規模な洪水が発生した。この洪水で,約150 億m3の水が氾濫し,関東平野とほぼ同じ面積の農地が浸水被害を受けたとされている。著者らは11月と12月にチャイナートからアユタヤ,そしてバンコクにかけて,氾濫流の流下に着目して面的な水質変動と時間的な水質変動を把握することを目的として水質調査を行った。その結果,氾濫流が南下しアユタヤを過ぎるとアユタヤの北側より複数の分析項目で高い値を示す地点の存在が確認され,サンプル採取数日前に浸水が始まったバンコクの浸水区域においてファーストフラッシュの影響を受けていたことや,アユタヤ周辺で11月の浸水時にはチャオプラヤ川へのし尿排水の流入の可能性が示唆されたが12月には水がひいてし尿排水の流入が止まったことが示唆された。