論文ID: 1925
風力発電の導入が進むにつれ、日本でも風力発電施設の存在がバードストライクや生息地放棄など鳥類へ影響を与えることが注目されている。欧州では風力発電施設の建設により影響を受ける鳥類の生息地が示された脆弱性マップが自然保護団体を中心に作成され、その活用により計画段階において影響が回避されるようになってきた。日本では風力発電施設の建設が集中する地域があらかじめ分かっているため、まずはそういった場所で地域的な脆弱性マップの作成が試みられるべきである。そこで(公財)日本野鳥の会は、風力発電の建設計画が集中し、かつ希少鳥類の生息地や渡り鳥が多い北海道の宗谷振興局西部地域で脆弱性マップの作成を試みた。脆弱性マップの作成方法について、まずは国内外の情報を収集し、次いで検討会を開催して作成方法等を決定し、検討会での決定事項に現地鳥類調査の結果を当てはめる形で作成した。脆弱性マップの作成開始時点では国内情報はなかったが、海外事例ではイングランド、スコットランド、アイルランド、ギリシャ、スロベニアのものを参考にして、作成方法を検討した。検討会では、脆弱性マップのあり方、衝突確率・回避率の取り扱い、鳥獣保護区等の取り扱い、渡り経路の取り扱い、作成対象となる鳥の種の選定方法、マップ上での脆弱性の表現、バッファーゾーンの取り扱い、脆弱性マップの更新などについて議論した。脆弱性マップ作成の対象となった鳥類は種脆弱性指標が高い種や地域重要種を中心に 23種となった。脆弱性マップは 84個の 5 kmメッシュ(面積約 2100 km2)で表現することとなり、対象鳥類の分布と一つのメッシュ上での重なり具合を考慮して脆弱性を 10段階に分け、それを 4色で表現した。その結果、希少な鳥類の生息地およびガン・ハクチョウ類の渡りが多い対象地域の西部、ハクチョウ類や海ワシ類の渡りが多い対象地域の北部が、風力発電施設による鳥類への脆弱性の高い場所であることが分かった。