抄録
溶ベンゼン分解微生物として推定されているSyntrophobacterales目細菌Hasda-Aとその類縁菌群を含む,嫌気条件でメタンを生成するベンゼン分解微生物群集積培養系について,有機酸の投与と培養温度の検討を行った。安息香酸,クロトン酸,フマル酸,酢酸をベンゼンと共に投与したところ,全ての場合で,有機酸の存在によって,ベンゼン分解の開始に遅れが見られた。しかし,Hasda-Aとその類縁菌群の菌数を維持できる可能性が示された。また,嫌気ベンゼン分解培養系の集積に成功した25℃から,中温メタン生成古細菌の増殖に適した37℃までの3℃ごと5段階で培養温度を検討したところ,31℃以下での培養は,34℃以上での培養と比べ,ベンゼンの分解速度を高く維持できることが示された。いずれの実験系においても,Hasda-Aとその類縁菌群の16S rRNA遺伝子コピー数とベンゼン分解に相関が見られた。