抄録
本研究では,フミン酸と銅の結合を考慮し,銅の藻類の生長阻害性のフミン酸の影響を定量的に調べた。まず,水素イオンと銅イオンのフミン酸への結合をNICA(non-ideal competitive adsorption)-Donnan Modelによって解析した。構築したモデルを用いて様々なpHにおけるフミン酸への銅の結合を予測し,次に,構築したモデルを用いて銅の藻類生長阻害性に対するフミン酸の影響を検証した。多摩川底質由来のフミン酸と市販のフミン酸とで銅の藻類の生長阻害性に対する影響が異なった。これは,多摩川底質のフミン酸がフルボ酸の性質に近く,市販のフミン酸と性質が異なっていることが考えられた。特に,フミン酸のカルボキシル基,フェノール基,ドナン相由来の3つの結合サイトの銅の結合量の総和に対し,結合力の強いフェノール基に結合した銅による藻類の生長阻害性への寄与は大きいと考えられた。