2013 年 36 巻 3 号 p. 77-83
有機物除去は下水処理の基礎であるが,活性汚泥中の細菌の有機物利用特性については十分に明らかになっていない。本研究では,実規模の下水処理場から採取した活性汚泥にモデル基質としてグルコース,酢酸を投与し,これらを利用する細菌をDNA安定同位体プローブ法によって同定した。その結果,グルコース同化細菌としてAeromonas属,Enterobacteriaceae科などに近縁な細菌群が検出された。一方,酢酸同化細菌としては,Acidovorax属,Acinetobacter属などに近縁な細菌群が検出された。グルコースについて,異なる基質濃度,異なる採取日の汚泥を用いて同様の試験を行ったが,検出されたグルコース同化細菌に差異は見られなかった。いずれの基質を用いた場合も,培養後に検出された細菌群の多くは培養前の汚泥には優占しておらず,単一基質の添加が細菌群集構造を大きく変化させたことが確認された。