水環境学会誌
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調査報告
多摩川上流に発生したかび臭産生藍藻の遺伝子解析結果
角田 徳子中東 寛和金見 拓及川 智
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2014 年 37 巻 1 号 p. 9-13

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抄録
東京都水道局が水源としている多摩川上流域においては,平成20年にかび臭原因物質である2-メチルイソボルネオール(2-MIB)が検出され,その後も2-MIB濃度は上昇傾向にある。平成23年には羽村取水堰から取水する小作浄水場の原水で水道水の水質基準(10 ng·L-1)を超過する高濃度の2-MIB(最高値:87 ng·L-1)が検出された。顕微鏡観察の結果から,かび臭の発生原因は河床の石に付着している藍藻類のPhormidium属(以下,従来までのPhormidium属という名称を用いる。)と考えられた。しかし,形態学的観察では種の同定が困難であったことから,遺伝子解析による種の推定を試みた。16S rRNA遺伝子とITS領域のほぼ全長である2000塩基の遺伝子配列の比較を行い,その結果から,当該藍藻は2-MIBを産生するPhormidium autumnaleと推定された。さらに,この2-MIB産生P. autumnaleは少なくとも平成17年から多摩川上流域に存在していたことも明らかとなった。
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© 2014 公益社団法人 日本水環境学会
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