水環境学会誌
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37 巻, 1 号
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ノート
  • 篠原 陽子
    原稿種別: ノート
    2014 年37 巻1 号 p. 1-7
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/01/10
    ジャーナル フリー
    これまでの研究で,非イオン界面活性剤水溶液を土壌を充填した層に吸引ろ過すると,非イオン界面活性剤(NPnEO)を捕捉・回収することができ,回収したNPnEOは再利用可能であることが明らかになった。このことは非イオン界面活性剤単独系で成り立つが,他の成分が共存する混合系の場合は成立するのかという課題が見出された。そこで,本報では,多成分系における捕捉率,回収率を調べ,それらの影響の有無を把握することを目的とし,非イオン界面活性剤(NP10,NP15,NP20)に,陰イオン界面活性剤(ドデシル硫酸ナトリウムSDS),無機ビルダー(硫酸ナトリウム),有機ビルダー(カルボキシメチルセルロースナトリウム)を混合した系で実験を行った。その結果,NP10(30 ppm)単独系の捕捉率95.6%に対して,硫酸ナトリウム(1.0%)を混合した系の捕捉率は93.1%,SDSを0.1%混合した系の捕捉率は90.5%,SDS 0.5%を混合した系の捕捉率は6.7%となり,単独系とSDS 0.5%混合系に有意差が認められた(Bonferroni,p<0.05)。捕捉率・回収率は,ビルダー混合よりも,陰イオン界面活性剤混合による影響が大きく,混合する濃度によって差がみられた。特に,NPnEOとSDSの濃度が臨界ミセル濃度(cmc)以上になると捕捉率・回収率が著しく低下し10%程度となり,SDSがNPnEOの捕捉を阻害していることが考えられた。以上のことから,混合系においてNPnEOの捕捉率を高めるためには,捕捉処理の過程で成分ごとに分離除去する必要があることが示唆された。
調査報告
  • 角田 徳子, 中東 寛和, 金見 拓, 及川 智
    原稿種別: 調査報告
    2014 年37 巻1 号 p. 9-13
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/01/10
    ジャーナル フリー
    東京都水道局が水源としている多摩川上流域においては,平成20年にかび臭原因物質である2-メチルイソボルネオール(2-MIB)が検出され,その後も2-MIB濃度は上昇傾向にある。平成23年には羽村取水堰から取水する小作浄水場の原水で水道水の水質基準(10 ng·L-1)を超過する高濃度の2-MIB(最高値:87 ng·L-1)が検出された。顕微鏡観察の結果から,かび臭の発生原因は河床の石に付着している藍藻類のPhormidium属(以下,従来までのPhormidium属という名称を用いる。)と考えられた。しかし,形態学的観察では種の同定が困難であったことから,遺伝子解析による種の推定を試みた。16S rRNA遺伝子とITS領域のほぼ全長である2000塩基の遺伝子配列の比較を行い,その結果から,当該藍藻は2-MIBを産生するPhormidium autumnaleと推定された。さらに,この2-MIB産生P. autumnaleは少なくとも平成17年から多摩川上流域に存在していたことも明らかとなった。
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