抄録
日吉ダム貯水池の深層における嫌気化抑制のために運用されていた水没式の深層曝気装置を2009年,内部で発生する未溶解空気を浅層循環に有効利用できるように仕様変更した。その効果検証の一環として翌年夏,浅層循環に関する調査実験を,水深5 m付近に一次躍層が形成された条件で実施した。第一に,複数の水温計を取り付けた計測用ロープを装置の北側水面近傍で水平移動させ,南北20 m,水深20 mの鉛直断面における装置稼働前後の水温を,貯水池環境が異なる場合について計測した。第二に,気泡噴流の水連行効果を調べるため,装置上方水面近傍の流速の測定を,装置上部の散気部形状が異なる場合について行った。その結果,直接的な躍層破壊範囲は半径約10~13 m,深さ2.7~3.2 mに及ぶこと,その最深部から水平に貫入するいわゆるイントリュージョンが存在すること,気塊せん断部が水連行効果を増大させる可能性などを明らかにした。