水環境学会誌
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37 巻, 2 号
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原著論文
  • 武田 文彦, 中野 和典, 相川 良雄, 西村 修, 島多 義彦, 袋 昭太, 仲沢 武志, 田中 仁志, 林 紀男, 稲森 悠平
    原稿種別: 原著論文
    2014 年37 巻2 号 p. 15-28
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/03/10
    ジャーナル フリー
    沈水植物のどの機能が微細藻類量(Chl.a)や微細藻類群集の変化に影響するか不明である。本研究では沈水植物イトモをモデル沈水植物とし,隔離水界での調査,室内実験結果に基づきアレロパシー等の4機能をモデル化し,沈水植物機能を考慮した生態系モデルを開発した。開発したモデルは隔離水界内の各種水質挙動を再現できた。モデル解析からアレロパシーはChl.a低下作用は小さいが藍藻類量を減少,珪藻類量を増加させるという藻類群集構造変化を引き起こすことが示された。アレロパシーとミジンコ類個体数増加機能を組み合わせた場合,ミジンコ類の餌として不適な藍藻類の量がアレロパシーにより低下し,相対的に珪藻・緑藻類の量が増加することでミジンコ類の藻類捕食が向上し,Chl.a低下効果が強化されることが示唆された。沈水植物のアレロパシーは微細藻類やミジンコ類などの微生物群集に直接的・間接的に大きな影響を与えると考えられた。
原著論文
  • 石川 百合子, 川口 智哉, 保高 徹生, 東野 晴行
    原稿種別: 原著論文
    2014 年37 巻2 号 p. 29-43
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/03/10
    ジャーナル フリー
    本研究では2011年3月の福島第一原発事故により放出された放射性セシウムによる河川流域における河川水濃度と流域土壌に蓄積した量(本論文では,蓄積量と表記する)の残存状況の推定を目的とした数値シミュレーションモデルを構築した。産総研-水系暴露解析モデル(AIST-SHANEL)をプラットフォームとし,流域における懸濁物質の流出ポテンシャルと放射性セシウムの動態を考慮したモデルを導入し,阿武隈川水系を対象にケーススタディーを実施した。その結果,本モデルの妥当性を検証し,降水による出水に伴う放射性セシウムの総流出量は僅かであることが示された。特に,セシウム137は自然崩壊が少ないことも相まって流域における蓄積量を減少させるのは困難なことが考えられ,除染をはじめ総合的な対策を検討することの必要性が示唆された。本モデルは放射性セシウムの河川流域での挙動解析や汚染対策の評価を可能にするものと考えられる。
原著論文
  • 奥村 浩気, 岸本 直之, 一瀬 諭, 馬場 大哉, 田中 仁志
    原稿種別: 原著論文
    2014 年37 巻2 号 p. 45-53
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/03/10
    ジャーナル フリー
    本研究では人工湖岸化が進んだ琵琶湖北湖東岸において湖岸形状と泥質化の関係を明らかにした。2002年に行った北湖湖岸帯湖底泥質化実態調査のデータを用いて湖岸類型,湖岸勾配,湖底形状と底泥のシルトや有機物等の含有量を比較したところ湖岸類型に依存せずに湖岸勾配の大きい地点においてシルトや有機物含有量が高まることを明らかにした。また,遠浅な湖岸においても谷地形を形成する勾配急変部より沖側で泥質が溜まりやすい環境になっていることが示唆された。そこで,泥質地点である長命寺と砂質地点である愛知川において流向流速を連続測定した。その結果,平均流速や最大・最小流速に違いは見られなかったが,長命寺では流向が頻繁に変化し水塊が停滞する傾向にあった。一方,愛知川では一方向に流れる傾向が見られた。したがって,遠浅な湖岸形状では一方向の流れによってシルト等の微細粒子が沖に輸送されている可能性が示唆された。
原著論文
  • 和田 桂子, 岸本 直之, 宗宮 功, 佐藤 寿彦, 津野 洋
    原稿種別: 原著論文
    2014 年37 巻2 号 p. 55-62
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/03/10
    ジャーナル フリー
    富栄養化の原因となるリン除去を目的に,赤玉土を土壌浸透浄化法へ適用するため,カラム法を用いてリン除去性能を把握する短期通水試験と共に,赤玉土のリン吸着寿命評価のため約7年間に渡る長期連続通水のリン吸着試験を実施した。その結果,土壌カラムのリン除去性能向上は,土壌との接触時間の維持確保,および,土壌層の厚み確保の双方が重要であることが明かとなった。リン吸着試験から,流出水リン濃度の急激な上昇が観測されるまでの累積リン吸着量はおよそ0.5~1.5 gP•kg-1の範囲と推察された。また,リン酸吸収係数の10%が土壌の浄化容量に相当し,施設設計のリン吸着寿命を推定する上で有効な指標となり得る。水質モニタリングから求めた累積リン除去量と累積リン吸着量はある程度一致し,本実験条件では,週2回程度の水質モニタリングにより吸着量を推定することができ,これによって実際の施設運用年数を推定することもできた。
技術報告
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