抄録
中国山地中部の源流域河川における融雪期の栄養塩濃度の特徴を明らかにするために,水文観測と週に1度の河川水採取を通年で行った。調査流域では1月や2月であっても一時的に融雪が進み流量が上昇した。無雪期(5~8月と9~12月)と比較し,融雪期(1~4月)における溶存態の窒素(DN)とリン(DP)濃度は高く,懸濁態の窒素(PN)とリン(PP)濃度は同等かやや低かった。融雪期の河川水のDNとDP濃度には,土壌からの溶脱水よりも積雪からの融雪水の方が強く影響すると推察された。融雪期のPNとPP濃度には,河道内での輸送可能な土砂の蓄積量低下が反映されることが示唆された。結論として,中国山地中部の森林流域においてDN,DP,及びTNの年流出負荷量を推定する際に,融雪期の濃度を無雪期のそれで代用すると過小評価につながること,及び融雪期の実地調査では1~3日に1度の頻度で河川水採取が必要であることが示された。