抄録
信濃川全流域を5つの流域に分割し,工業からの窒素負荷発生量も加算して1970年-2005年における年間窒素負荷発生量を5年毎に発生源別に算出し,流域各地点での河川水中の全窒素濃度の変遷と比較した。窒素負荷発生源を畜産廃棄物,生活排水,農耕地,森林,市街地,および工業排水とした。今回の調査により,信濃川の中流域下部から下流域における河川水中の全窒素濃度の経年的減少傾向の原因が,流域における家畜飼育頭数の減少,下水道の整備等による下水処理水の改善,および農耕地面積の減少によるものと推察された。また,全窒素負荷発生量における工業排水の占める割合は,信濃川中流域(長野県)で約20%,下流域(新潟県)で約50~60%に上ることが明らかになった。さらに信濃川中流域,下流域における全窒素濃度を減少させるには,工業排水への何らかの対策が効果的である。