抄録
メタンガス回収や汚泥生成量削減の観点から,嫌気性処理と膜分離技術を組み合わせた嫌気性膜分離法(AnMBR)が注目されている。本研究では段階的に温度を下げて,人工下水を用いた連続処理実験を行い,処理性能や物質収支,膜性能に及ぼす温度の影響を評価した。HRT 12hにおいて,25,20,15°Cでの処理水の化学的酸素要求量(COD)及びCOD除去率はそれぞれ18,17,40 mg•L-1,96,96,92%であり,低温処理が可能であることが示された。物質収支においてメタンガス回収率は15°Cで,10%前後低下した。膜性能面において温度低下により膜圧増加速度が増加し,その要因として有機物の目詰まりが考えられた。ケーススタディより,AnMBRは従来の下水処理プロセスと比べて良好な水質,効率の良いエネルギー回収,汚泥生成量の削減が同時に実現する可能性が示唆された。