抄録
奈良市内における農業用ため池41個の水環境評価を目的として,水質調査を実施すると共に各ため池の基礎諸元データを収集した。水質調査結果から,非灌漑期よりも灌漑期の水質が悪化していること,また8項目(pH,EC,TRP,DTN,DTP,COD,Chl.a,SS)を変数とした主成分分析から,対象ため池の水質特性が有機物汚濁と無機物汚濁の程度を示す2つの主成分で説明できることが明らかになった。さらに,5項目(DTN,DTP,COD,Chl.a,SS)からなる水質汚濁指標(WQI)から,約29%の対象ため池の水質が悪化していること,奈良市西部地域のため池が東部地域と比較して水質汚濁が進行していることが示された。WQIと基礎諸元との相関分析の結果,集水域の森林面積割合,畑面積割合,宅地面積割合,堤高,および養魚利用の有無がため池の水質に影響を与えていることが示唆された。